生死不明の相続人がいると遺産分割はどうなる? 相続で問題となる「失踪宣告」を弁護士が解説
「何十年も連絡を取っていない兄弟が相続人になっている」
「相続人の一人が行方不明で、生きているのか亡くなっているのか分からない」
相続の相談では、このようなケースが少なくありません。
特に親族との交流が長期間途絶えている場合、相続が発生して初めて生死不明の相続人の存在が問題になることがあります。
もっとも、相続人の一人でも参加しなければ、原則として遺産分割協議は成立しません。
そのため、生死不明の相続人がいる場合には、まずその状態を法的に整理する必要があります。
そこで利用されることがあるのが「失踪宣告」という制度です。
生死不明の相続人がいると遺産分割できない
遺産分割協議は、原則としてすべての相続人が参加しなければなりません。
例えば、
- 父が死亡
- 相続人は母と子ども3人
- 子どもの一人が何十年も行方不明
という場合でも、行方不明の相続人を無視して遺産分割を行うことはできません。
仮に他の相続人だけで遺産分割協議書を作成しても、後に無効と判断される可能性があります。
そのため、まずは生死不明の相続人について法的な手続を検討する必要があります。
失踪宣告とは
失踪宣告とは、長期間にわたり生死不明となっている人について、家庭裁判所が法律上死亡したものとみなす制度です。
民法では、
- 生死不明の状態が7年間続いている場合の「普通失踪」
- 戦争や船舶の沈没、自然災害などの危難後に生死不明となり、その危難が去ってから1年間生死が分からない場合の「特別失踪」
が定められています。
失踪宣告が確定すると、その人は法律上死亡したものとして扱われます。
相続で失踪宣告が利用されるケース
実務上、失踪宣告が問題になるのは、
- 長年音信不通の兄弟姉妹
- 行方不明となった親族
- 海外へ渡ったまま消息不明の親族
などが相続人になっている場合です。
特に近年は、高齢化に伴い、
「戸籍上は生存しているが、実際には何十年も所在が分からない」
というケースも少なくありません。
相続登記義務化の影響もあり、こうした問題が表面化する場面は増えています。
超高齢者の場合でも失踪宣告は必要?
報道などでは、
「生きていれば120歳を超える人に失踪宣告が申し立てられた」
という事例が取り上げられることがあります。
確かに、現実的には生存している可能性が極めて低いと思われるケースもあります。
しかし、現在の法律では、
「極端な高齢だから死亡したものとして扱う」
という制度はありません。
戸籍上生存している以上、相続手続や不動産の名義変更を進めるためには、原則として失踪宣告などの法的手続が必要になります。
失踪宣告以外の方法が利用されることもある
もっとも、相続人が行方不明だからといって、常に失踪宣告を申し立てるわけではありません。
例えば、所在は分からないものの生存している可能性がある場合には、不在者財産管理人の選任が問題となることもあります。
どの手続を選択するべきかは、
- 最後に連絡が取れた時期
- 生死に関する情報の有無
- 相続財産の内容
などによって異なります。
そのため、まずは戸籍や住民票の調査を行ったうえで、適切な手続を検討することになります。
東三河でも珍しくない相続問題
豊橋市や豊川市など東三河地域でも、
「兄弟と何十年も会っていない」
「親族が遠方に住んでいて所在が分からない」
という相談は珍しくありません。
特に不動産を相続する場面では、相続人全員の関与が必要となるため、生死不明の相続人の存在が大きな障害になることがあります。
相続登記の義務化により、不動産の名義変更を後回しにすることも難しくなっています。
まとめ
生死不明の相続人がいる場合、その人を除外して遺産分割を行うことは原則としてできません。
長期間にわたり生死不明の状態が続いている場合には、失踪宣告によって法律上死亡したものと扱うことが可能です。
もっとも、失踪宣告が適切なのか、不在者財産管理人の選任が必要なのかは事案によって異なります。
相続人の所在が分からないまま手続を進めようとすると、後に大きな問題となることもありますので、早い段階で専門家に相談し、適切な対応を検討することをおすすめします。
この記事は、愛知県豊橋市の弁護士法人柴田・中川法律特許事務所の弁護士が監修しています。
同事務所では、豊橋・東三河地域を中心に、相続・遺産分割・相続放棄・遺言、遺留分、成年後見制度などの法律相談に対応しています。

