相続放棄が過去最多に。なぜ増えている? 手続の流れと注意点を弁護士が解説
近年、相続放棄を選択する人が大幅に増えています。
司法統計によると、家庭裁判所が受理した相続放棄の件数は、1980年代には年間数万件程度でしたが、近年は年間20万件を超え、過去最多水準で推移しています。
かつては「親の財産は引き継ぐもの」という考え方が一般的でしたが、現在では相続放棄が珍しい手続ではなくなっています。
では、なぜ相続放棄はこれほど増えているのでしょうか。
今回は、相続放棄が増加している背景と、手続の際に注意すべきポイントについて解説します。
相続放棄とは?
相続放棄とは、亡くなった方の財産や負債を一切引き継がないための手続です。
相続放棄をすると、法律上は最初から相続人ではなかったものと扱われます。
そのため、
- 預貯金
- 不動産
- 株式
などの財産を取得できなくなる一方で、
- 借金
- 保証債務
などの負債も引き継ぐ必要がなくなります。
相続放棄をするためには、原則として「自己のために相続の開始があったことを知った日から3か月以内」に家庭裁判所へ申述する必要があります。
なぜ相続放棄が増えているのか
空き家や地方不動産の問題
相続放棄増加の大きな要因として挙げられるのが、不動産を取り巻く環境の変化です。
以前は、
「不動産を持っていれば価値がある」
という考え方が一般的でした。
しかし現在では、
- 買い手が見つからない
- 解体費用が高額
- 固定資産税がかかる
- 管理の負担が大きい
といった理由から、不動産が必ずしも資産とはいえないケースも増えています。
特に空き家となった実家について、
「相続しても使う予定がない」
という相談は少なくありません。
相続登記義務化の影響
2024年から相続登記が義務化されたことも、相続に対する意識の変化につながっています。
以前は名義変更を先送りにしていたケースもありましたが、現在は相続後の管理責任や手続負担を意識する人が増えています。
その結果、
「本当に相続すべき財産なのか」
を慎重に考える人が増えたと考えられます。
借金だけでなく「負担」を避けるための相続放棄
相続放棄というと借金対策のイメージが強いかもしれません。
しかし近年は、
「借金はないが、管理が困難な不動産しかない」
という理由で相続放棄を選択するケースも増えています。
いわゆる「負動産」の問題が社会的に顕在化していることも背景にあるといえるでしょう。
相続放棄を検討した方がよいケース
例えば、
- 借金が多い可能性がある
- 空き家しか相続財産がない
- 被相続人と長年疎遠で財産状況が分からない
- 保証人になっていた可能性がある
といった場合には、相続放棄を検討する価値があります。
もっとも、相続放棄は一度受理されると原則として撤回できません。
そのため、財産調査を十分に行った上で判断することが重要です。
弁護士へ相談した方がよいケース
相続放棄は比較的利用しやすい手続であり、ご自身で申立てを行う方も少なくありません。
もっとも、次のような場合には早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
相続財産の全容が分からない
預金や不動産、借金の有無が分からない場合には、相続放棄をするべきか判断できません。
このような場合には、家庭裁判所へ熟慮期間伸長の申立てを行い、その間に財産調査を進めることがあります。
3か月を過ぎてしまった
3か月の期間を経過した場合でも、事情によっては相続放棄が認められるケースがあります。
ただし、個別の事情による判断となるため、専門的な検討が必要です。
財産に手を付けてしまった
預金を引き出したり、不動産を処分したりすると、「相続を承認した」と判断される可能性があります。
もっとも、どのような行為が問題になるかは具体的事情によって異なりますので、早めの相談が重要です。
東三河でも増えている相続放棄の相談
豊橋市や豊川市など東三河地域でも、
- 誰も住まなくなった実家
- 山林や農地
- 売却が難しい地方不動産
に関する相談は増えています。
特に空き家問題は深刻化しており、「相続するべきか放棄するべきか」で悩まれる方も少なくありません。
まとめ
相続放棄が増加している背景には、
- 空き家問題
- 地方不動産の価値下落
- 相続登記義務化
- 相続人の意識変化
などがあります。
相続放棄は有効な選択肢の一つですが、一度行うと原則として撤回できません。
また、3か月という期間制限もあります。
相続財産の内容が分からない場合や、相続放棄をするべきか迷う場合には、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
この記事は、豊橋市の弁護士法人柴田・中川法律特許事務所の弁護士が監修しています。
同事務所では、豊橋・東三河地域を中心に、相続・遺産分割・相続放棄・遺言などの法律相談に対応しています。

