70代の子どもが90代の親を相続する時代に。増える「老老相続」の問題点と対策を弁護士が解説
相続というと、
「働き盛りの子どもが親の財産を引き継ぐもの」
というイメージを持たれる方もいるかもしれません。
しかし近年は、親も子も高齢者である「老老相続」が増えています。
例えば、
90代の親が亡くなり、相続人である子どもが70代や80代というケースは、もはや珍しくありません。
高齢化が進む中で、この老老相続は様々な問題を生じさせています。
今回は、老老相続の現状と注意点について解説します。
老老相続とは?
老老相続とは、一般的に、
高齢の親が亡くなり、高齢の子どもが相続人となる相続をいいます。
平均寿命の伸びや医療の発達により、親が90代まで長生きすることも増えました。
その結果、相続人である子どももすでに70代や80代になっているケースが少なくありません。
実際の相続相談でも、
「相続人全員が高齢者」
という事例は増えています。
判断能力の問題が生じやすい
老老相続で最も問題になりやすいのが、相続人自身の判断能力です。
遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
しかし、
- 認知症を発症している
- 判断能力が低下している
という相続人がいると、遺産分割協議を進めることができません。
このような場合には、成年後見人の選任が必要になることがあります。
もっとも、成年後見制度を利用すると、
- 申立ての手続
- 後見人への報酬
- 家庭裁判所への定期報告
などが必要となり、相続手続が複雑になることもあります。
相続手続が長期化しやすい
高齢になると、
- 入院中
- 介護施設に入所中
- 遠方に居住している
というケースも増えます。
そのため、
書類の確認や押印だけでも時間がかかり、遺産分割協議がなかなか進まないことがあります。
実際には、
「相続人の体調が安定するまで待っていたら数か月経ってしまった」
ということも珍しくありません。
相続手続中に次の相続が発生することも
老老相続で特に注意が必要なのが、
相続手続の途中で相続人が亡くなるケースです。
例えば、
父が亡くなる
↓
相続人である長男(75歳)が遺産分割前に亡くなる
↓
長男の配偶者や子どもが新たな相続人となる
という状況です。
これを「数次相続」といいます。
数次相続が発生すると、
- 相続人の数が増える
- 関係者が遠方に住んでいる
- 面識のない親族が相続人になる
などの事情から、手続がさらに複雑になる傾向があります。
空き家問題とも関係する
老老相続は、空き家問題とも深く関係しています。
高齢の相続人自身が、
- すでに持ち家に住んでいる
- 施設に入所している
- 実家に戻る予定がない
ということも多く、相続した実家が空き家になるケースが少なくありません。
その結果、
- 管理が行き届かない
- 売却が進まない
- 次世代へ問題が引き継がれる
といった問題が生じます。
老老相続への対策
老老相続のリスクを減らすためには、生前からの準備が重要です。
遺言書を作成する
最も有効な対策の一つが遺言書です。
遺言書があれば、遺産分割協議を行わずに手続を進められる場合が多く、相続人の負担を大きく減らすことができます。
家族信託を活用する
将来の認知症リスクが心配な場合には、家族信託の活用も選択肢になります。
元気なうちに財産管理の仕組みを整えておくことで、判断能力が低下した後も柔軟な管理が可能になります。
生前贈与を検討する
財産の一部を生前に承継しておくことで、相続時の負担を軽減できる場合があります。
ただし税務上の問題もありますので、専門家への相談が必要です。
東三河でも増える老老相続
豊橋市や豊川市など東三河地域でも、高齢の親と高齢の子どもによる相続相談は増えています。
特に、
- 空き家となった実家
- 認知症の相続人
- 相続手続の長期化
といった問題は、実際の相談でもよく見られます。
「まだ先の話」と思っていても、親が90代、子どもが70代という家庭では、相続はいつ始まってもおかしくありません。
まとめ
高齢化の進展により、親も子も高齢者である老老相続は今後さらに増えていくと考えられます。
老老相続では、
- 認知症による判断能力の問題
- 相続手続の長期化
- 数次相続
- 空き家問題
などが生じやすくなります。
相続が始まってから慌てるのではなく、遺言書や家族信託などを活用し、生前から準備を進めておくことが重要です。
この記事は、豊橋市の弁護士法人柴田・中川法律特許事務所の弁護士が監修しています。
同事務所では、豊橋・東三河地域を中心に、相続・遺産分割・相続放棄・遺言などの法律相談に対応しています。

