親が亡くなった後、実家を空き家のままにしていませんか? 注意点を豊橋の相続弁護士が解説

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親が亡くなった後、実家をどうするか決められないまま、空き家の状態が続いているという相談は少なくありません。特に、豊橋、豊川、田原などの東三河地域では、持ち家率が高く、実家を離れて自身の家を建てる人が多いため、相続に伴う実家の処理は、よく起こりがちな問題です。

「すぐに売る予定はない」
「兄弟でまだ話がまとまっていない」
「荷物の整理が終わっていない」
「誰も住まないが、親の家なので処分しづらい」

このような事情から、長年にわたって実家が空き家のままになっていることがあります。

しかし、相続した実家を放置していると、相続人同士の問題だけでなく、建物の管理責任、近隣トラブル、固定資産税、相続登記など、さまざまな問題につながる可能性があります。

特に近年は、相続登記の義務化や空家等対策の強化により、「とりあえずそのままにしておく」ことのリスクは以前より非常に大きくなっています。相続登記は、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があり、正当な理由なく怠った場合には10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

今回は、相続した実家を空き家のままにしている場合に注意すべき法律上・実務上の問題について解説します。

実家が空き家のままになりやすい理由

実家は、預貯金のように簡単に分けられる財産ではありません。

そのため、相続人の間で、

「売却したい」
「できれば残したい」
「誰かが住むかもしれない」
「解体費用を誰が負担するのか分からない」

といった意見の違いが出やすい財産です。

また、親が長年住んでいた家には感情的な面もあります。相続人の一人が「すぐに売るのは忍びない」と考える一方で、別の相続人は「管理できないなら早く処分したい」と考えることもあります。

このように方針が決まらないまま時間が経つと、建物は老朽化し、相続人の関係もこじれやすくなります。

実務上も、最初の数年は誰も問題にしていなかったが、固定資産税、草刈り、近隣からの苦情、などをきっかけに揉め始めたというケースはよくあります。

相続登記をしないまま放置するリスク

親が亡くなったあとの実家について、まず確認すべきなのが名義です。

2024年4月1日から、相続登記の申請は義務化されています。相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に登記申請をする必要があります。正当な理由なく申請をしない場合には、10万円以下の過料の対象となる可能性があります。

ここで注意が必要なのは、「親が亡くなった後、まだ遺産分割協議が終わっていないから何もしなくてよい」とは限らないことです。

遺産分割がまとまっていない場合でも、相続人申告登記など、義務違反を避けるための制度が用意されています。相続人が多数いる場合や、戸籍の収集に時間がかかる場合など、正当な理由が認められることもありますが、単に面倒だから放置しているというだけでは危険です。

特に、名義が、亡くなった親ではなく祖父母やそれ以前の代のままになっているケースでは、相続人の数が非常に増えていることがあります。そうなると、売却や解体を進めようとしても、関係者の同意を集めるだけで大きな負担になります。

空き家問題は、建物の問題であると同時に、名義整理の問題でもあります。

空き家には所有者・管理者としての責任がある

空き家は、誰も住んでいなくても管理が必要です。

屋根や外壁が傷む、庭木や雑草が伸びる、害虫や害獣が発生する、不法投棄をされるといった問題は、時間が経つほど起こりやすくなります。

さらに、台風や強風で瓦や外壁材が飛び、近隣の建物や通行人に被害が出た場合には、損害賠償の問題になる可能性もあります。

「住んでいないから関係ない」ではなく、所有している以上、適切に管理する責任があります。

実家を相続した後、誰が草刈りをするのか、固定資産税を誰が払うのか、近隣対応を誰がするのかを決めないままにしておくと、相続人の一部だけに負担が偏ることがあります。

その不満が、後の遺産分割協議や親族間の対立につながることもあります。

「特定空家等」や「管理不全空家等」になる可能性

空き家問題で特に注意したいのが、空家等対策の推進に関する特別措置法です。

同法では、倒壊等のおそれがある、衛生上有害となるおそれがある、著しく景観を損なっている、周辺の生活環境の保全上不適切な状態にある空き家などが、「特定空家等」として扱われる可能性があります。国土交通省も、空家等対策特別措置法に関する制度情報を公表しています。

また、法改正により、「特定空家等」になる前の段階でも、放置すれば特定空家等になるおそれのある空き家について、「管理不全空家等」として指導・勧告の対象となる制度が設けられています。国土交通省の資料でも、管理不全空家等・特定空家等に対する措置と、固定資産税等の住宅用地特例の解除が整理されています。

つまり、建物が実際に倒壊寸前になるまで何も起きないわけではありません。状態が悪化する前の段階でも、行政から管理を求められる可能性があります。

豊橋市でも、「豊橋市空家等の適切な管理及び活用に関する条例」が施行されており、「特定空家等」「管理不全空家等」に加え、周辺の生活環境に悪影響を及ぼすおそれのある空家等について定義が置かれています。

相続した実家について、外壁の破損、屋根の傷み、草木の繁茂、害虫の発生、近隣からの苦情がある場合には、単なる空き家ではなく、行政対応の対象となる可能性を意識する必要があります。

勧告を受けると固定資産税の負担が増えることがある

空き家を放置する大きなリスクの一つが、固定資産税です。

住宅が建っている土地には、通常、住宅用地の特例が適用され、固定資産税の課税標準が軽減されています。

しかし、特定空家等や管理不全空家等について勧告を受けた場合、この住宅用地特例の対象から外れる可能性があります。国土交通省の資料でも、適切な管理が行われていない空家が放置されることへの対応として、固定資産税等の住宅用地特例を解除する仕組みが示されています。

よく「空き家になると固定資産税が6倍になる」と言われることがありますが、正確には、空き家であるだけで直ちに6倍になるわけではありません。

問題は、管理不全空家等や特定空家等として勧告を受け、住宅用地特例が適用されなくなる場合です。

この点を誤解して、「空き家でも建物を残しておけば税金が安い」とだけ考えていると危険です。

老朽化した建物を放置していると、かえって税負担や管理負担が重くなる可能性があります。

相続人同士の対立は、時間が経つほど解決しにくくなる

実家の相続では、法律上の持分だけでなく、家族間の感情が大きく影響します。

例えば、

・長男が親の近くに住んで管理していた
・一部の相続人だけが固定資産税を払っていた
・親の介護をした人としていない人がいる
・売却したい人と残したい人がいる
・解体費用の負担で意見が割れている

このような事情が重なると、単純に「法定相続分で分けましょう」と言っても話が進まないことがあります。

また、空き家を長期間放置している間に、さらに相続が発生することもあります。相続人の一人が亡くなれば、その配偶者や子どもが新たに関係者となり、話し合う人数が増えていきます。

その結果、売却したいと思ったときには、誰に連絡すればよいのか分からない、相続人の一部が協力してくれない、といった問題が生じます。

空き家の相続で大切なのは、「今すぐ困っていないから大丈夫」と考えないことです。

実家をどうするか、早めに整理しておくべきこと

相続した実家については、まず次の点を整理する必要があります。

・誰が相続人か
・現在の登記名義は誰か
・固定資産税を誰が払っているか
・建物の状態に問題はないか
・近隣から苦情が出ていないか
・売却、賃貸、解体、取得のどれが現実的か
・相続人の中で意見が分かれていないか

ここを曖昧にしたまま時間が経つと、問題が複雑になります。

特に、建物の老朽化が進んでいる場合や、相続人間で意見が分かれている場合には、早めに方針を決める必要があります。

売却するにしても、解体するにしても、まずは権利関係が整理されていなければ進められません。

実家の空き家問題は、相続問題として早めに対応を

親が亡くなった後の実家は、思い出のある財産である一方、管理や費用の負担を伴う不動産でもあります。

空き家のまま放置すると、

・相続登記の義務違反
・建物の老朽化
・近隣トラブル
・特定空家等・管理不全空家等としての行政対応
・固定資産税の負担増
・相続人同士の対立

といった問題につながる可能性があります。

実家を残すのか、売却するのか、誰かが取得するのか、解体するのか。
正解は事案によって異なります。

ただ、いずれの場合でも、早い段階で相続人、名義、建物の状態、管理負担を整理することが重要です。

「相続登記をどう進めればよいか分からない」
「兄弟で実家の扱いについて話がまとまらない」
「空き家を売るべきか、残すべきか迷っている」

このような場合には、問題が大きくなる前に、弁護士に相談することをおすすめします。

この記事は、愛知県豊橋市の弁護士法人柴田・中川法律特許事務所の弁護士が監修しています。
同事務所では、豊橋・東三河地域を中心に、相続・遺産分割・空き家問題・相続放棄・遺言・遺留分・成年後見などの法律相談に対応しています。

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中川 英俊
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