【2026最新改正】同一労働・同一賃金の指針改正と企業に求められる対応を弁護士が解説

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厚生労働省は、パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善を目的として、同一労働同一賃金に関するルールを改正しました。今回の改正は令和8年10月施行予定であり、企業実務に与える影響は小さくありません。本記事では、厚労省のリーフレットhttps://www.mhlw.go.jp/content/001696565.pdf をもとに、弁護士の視点から重要ポイントを解説します。


労働条件の明示義務が強化される

まず大きな変更点として、雇い入れ時の労働条件明示事項が追加されます。新たに「待遇差の内容・理由について説明を求めることができる旨」を明示する必要があります(リーフレット1ページ)。

これは、労働者が自ら待遇差の合理性を確認できる仕組みを強化するものです。企業としては、単に説明できる状態にするだけでなく、説明内容そのものの合理性が問われる点に注意が必要です。


各種手当・福利厚生の見直しが必須に

改正の中核は、「どのような待遇差が不合理か」を具体化した点です。

例えば以下のような整理が明確に示されています(リーフレット2ページ)。

  • 業務内容が同一であれば無事故手当を支給
  • 継続勤務が見込まれる場合は家族手当を支給
  • 転居を伴う配置変更がある場合は住宅手当を支給

さらに、賞与や退職手当についても、その目的(功労報償や後払い賃金等)が非正規にも妥当する場合には、均衡の取れた支給が求められるとされています。

重要なのは、「正社員だから支給する」という形式的な理由では足りず、手当の趣旨に照らして説明できるかが判断基準になる点です。


福利厚生・休暇・病気休職も対象に

待遇差の検討対象は手当だけではありません。

リーフレット3ページでは、以下のような点も明示されています。

  • 夏季・冬季休暇は同様に付与
  • 一定勤続者への褒賞は同様に付与
  • 病気休職時の給与保障も継続勤務が見込まれれば同様に適用

さらに、福利厚生施設の利用条件(食堂・保養所等)についても、不合理な差を設けてはならないとされています。

つまり、賃金だけでなく「働く環境全体」における公平性が求められているといえます。


正社員引下げによる是正は否定

企業実務上重要なのが、是正方法に関する指摘です。

不合理な待遇差を解消するにあたり、「正社員の待遇引下げによる調整」は望ましくなく、あくまで非正規の待遇改善によるべきとされています(3ページ)。

これは、コスト抑制のために全体水準を下げる対応を事実上否定するものであり、企業にとっては制度設計上の制約となります。


「人材確保目的」だけでは不十分

従来、待遇差の理由としてよく挙げられていた「正社員確保・定着のため」という説明についても、今回の改正は明確な制約を設けています。

すなわち、そのような目的だけでは直ちに合理性が認められるものではなく、他の事情(職務内容等)とあわせて判断されるとされています(3ページ)。

この点は、従来の人事制度の前提を見直す必要があることを意味します。


説明義務と社内プロセスの整備が重要

さらに、企業には待遇差について説明する義務があります。労働者から求めがあれば、待遇差の内容や理由を説明しなければなりません(5ページ)。

加えて、求めがない場合でも、更新時などに資料を配布するなどの周知が望ましいとされています。

したがって、単に制度を整えるだけでなく、

  • 説明資料の整備
  • 社内の説明プロセス構築
    が実務上不可欠となります。

企業に求められる対応の方向性

以上を踏まえると、企業が取るべき対応は明確です。

  1. 各手当・福利厚生の「目的」を明確化する
  2. 非正規にも当てはまるかを検証する
  3. 不合理な差があれば是正する
  4. 説明できるよう文書化する

今回の改正は、形式的な制度整備から「説明責任の時代」への移行を示すものといえます。


まとめ

今回の同一労働同一賃金の改正は、企業に対し「なぜ待遇差があるのか」を具体的に説明できる体制を求めるものです。

今後は、単に雇用区分の違いに依拠した制度は通用しにくくなり、職務や制度趣旨に基づく合理的な設計が不可欠となります。

早い段階で自社制度を点検し、説明可能性を高めることが、リスク回避の観点からも極めて重要といえるでしょう。

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中川 彩子
中川 彩子
弁護士・公認不正検査士(CFE)
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