成年後見制度は一度利用するとやめられない?見直し・改正議論を弁護士が解説

y-yoshida

認知症などで判断能力が不十分な方を支える「成年後見制度」がいま、大きな転換期を迎えています。これまでこの制度は、一度利用を始めると本人が亡くなるまで原則として解約できず、後見人への報酬も一生続くという「出口のなさ」が大きな課題でした。2026年現在、こうした課題を解消するための民法改正に向けた議論が最終段階に入っています。

1. 期間限定での利用が可能に

今回の見直しにおける最大のポイントは、制度利用に「期間」や「目的」を設定できる点です。 これまでは、遺産分割協議や不動産の売却といった一時的な手続きのために制度を利用した場合でも、手続き完了後に後見人を外すことは困難でした。改正案では、特定の目的を達したときや、あらかじめ定めた期間が経過したときに、制度を終了させることができる仕組みが検討されています。

2. 「包括的な代理」から「必要な支援」への絞り込み

現行の後見制度は、後見人が本人に代わってあらゆる契約や財産管理を行う「包括的代理権」が基本でした。しかし、これでは本人の意思が十分に反映されないとの指摘がありました。 新たな制度設計では、現行の「後見・保佐・補助」という画一的な枠組みを再編し、本人の希望や状況に合わせて「どの範囲で支援が必要か」を個別に決める仕組みを目指しています。本人の自己決定権を最大限に尊重する形へと変化します。

3. 後見人の交代がより柔軟に

これまでは、後見人に不正などの明確な非がない限り、本人の希望による交代はほぼ認められませんでした。改正後は、本人との相性や生活環境の変化など、「本人の利益のために必要である」と認められれば、より柔軟に後見人を交代できるようになります。


弁護士の視点:制度を「使い分ける」という選択

制度が柔軟になる一方で、重要性を増すのが「事前の備え」です。元気なうちに将来の支援者や支援内容を決めておく「任意後見制度」や「家族信託」と、今回の改正による「使い勝手の良くなった法定後見」を、状況に応じて適切に組み合わせることが、これからの時代のスタンダードになります。

今回の改正は、2028年頃の施行を視野に議論が進んでいます。制度を「避けるもの」ではなく、家族の財産と尊厳を守るための「必要な時に借りるツール」として捉え直す時期に来ていると言えるでしょう。

About
由田 恭子
由田 恭子
弁護士
記事URLをコピーしました