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賃料の増額請求~アパート大家さんのお悩み~

  • 不動産

2024年06月19日

 不動産賃貸経営をされている方からご相談を受けることもよくありますが、近年、都市部での不動産相場の上昇に伴い、賃料の増額を検討される方も多くおられます。
 しかし、なかなかスムーズに増額ができないことも多く、お悩みの大家さんも多いように思います。
 以下、具体的な事例に沿って解説していきます。

 私は賃貸アパートの経営をしています。アパートを建築した10年ほど前は周りに何もなく、あまり人気のある立地とはいえませんでした。しかし、この10年の間に、大型の商業施設や工場ができるなどして、地価が急上昇しています。近隣の賃料相場も、軒並み私の物件よりも高くなっています。そこで、アパートの部屋は、住民が入れ替わるタイミングで賃料を上げています。
 しかし、10年前から住んでいるAさんの部屋だけが、当時の賃料のままとなっています。これまでに何度か賃料の増額をお願いしているのですが、Aさんは、「契約をして、これまできちんと家賃を支払っているのに、一方的に賃料を上げるのはおかしい。むしろ10年も住んでいるのだから賃料を下げてもらいたいくらいだ」と主張して、応じてもらえません。なんとかならないでしょうか。

 賃借人の方との合意ができれば、当然賃料の増額は可能ですが、Aさんのように、頑として受け入れない方がおられた場合、どうすれば良いでしょうか。

 アパートの賃貸借契約には、「借地借家法」という法律が適用されます。
 借地借家法32条1項には、

 「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」

 という定めがあります。
 つまり、
    ①土地・建物に対する税金の増減
    ②土地・建物の価格の上昇低下等の経済事情の変動
    ③近傍同種の建物の借賃との比較
などを考慮して、賃料が不相当といえるときは、大家さんのほうから、将来に向かって賃料増額を請求することができ、これには相手方の同意は条件とされていません。

 本件では、地価の急上昇や近隣相場との比較などの事情から、上記の要件を満たし、賃料の増額が認められる可能性は十分あると思います。

 とは言っても、実際にAさんが値上げした賃料を支払わない可能性が高く、スムーズに増額できない可能性も高いでしょう。増額に応じないからといって、追い出すこともできません。

 その場合、裁判所の手続きを利用することになり、まず簡易裁判所に賃料増額の調停を申し立てることになります。調停で話がまとまらなければ、賃料増額の訴訟を起こすことになります。

 調停や訴訟で賃料の増額ができたとしても、そこまでにかかる時間や費用を考えると、本当は、Aさんと円満に話し合いができることがベストです。
 Aさんに増額を受け入れてもらえるよう、誠意を持ってお話ししたり、きちんとした資料(不動産価格の上昇や、近隣の賃料に関して)を見せて、こちらの要求が妥当であることをわかってもらえるように努力をするのが、案外近道だったりします。

 大家さん業は、空室対策や建物の管理修繕など、日々さまざまな問題が発生し、気が休まらないという方も多いと思います。

 弁護士法人柴田・中川法律特許事務所では、賃貸経営をされている方からのご相談も数多く承っていますので、少しでもお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の執筆者

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弁護士(静岡県弁護士会所属)

矢野 元美MOTOMI YANO

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