法律関連コラム

遺言書に子どもへの思いは書ける? 相続トラブルの予防にもつながる「付言事項」を弁護士が解説

h-shibata

「なぜこのような遺言を残したのかを家族に伝えたい」

「子どもたちに仲良くしてほしいという思いを書き残したい」

遺言書を作成される方から、このような希望を伺うことがあります。

遺言書というと、

「誰にどの財産を相続させるか」

を決めるものというイメージが強いかもしれません。

しかし、遺言書には財産の分け方だけでなく、自分の思いや家族へのメッセージを残すこともできます。

それが「付言事項」です。

今回は、付言事項とは何か、どのような場合に活用できるのかについて解説します。

付言事項とは何か

遺言書に記載される内容は、大きく二つに分けることができます。

一つは「法定遺言事項」です。

例えば、

  • 誰にどの財産を相続させるか
  • 遺贈をするか
  • 遺言執行者を指定するか

といった内容です。

これらは民法で定められた事項であり、適法な遺言として作成されれば法的な効力を持ちます。

これに対して、法的な効力はないものの、遺言者の気持ちや希望を記載する部分を「付言事項」といいます。

どのようなことを書くのか

付言事項には様々な内容を書くことができます。

例えば、

  • このような遺産分割にした理由
  • 配偶者への感謝の気持ち
  • 子どもたちへのメッセージ
  • 兄弟姉妹が争わないでほしいという願い
  • 葬儀や納骨についての希望

などです。

法律上の決まりはありませんので、遺言者の思いを自由に記載することができます。

法的効力がないのに重要なのはなぜか

付言事項には法的拘束力はありません。

例えば、

「兄弟仲良くすること」

と書いても、それを法的に強制することはできません。

しかし、実務上は付言事項が大きな意味を持つことがあります。

相続人にとっては、

「なぜこのような財産の分け方になったのか」

が分からないことが争いの原因になることが少なくありません。

例えば、

  • 同居していた長男に自宅を相続させる
  • 介護をしてくれた子どもに多く財産を残す

といった内容の場合、理由が書かれていなければ不満を抱く相続人もいるでしょう。

しかし、

「長年介護をしてくれたことへの感謝としてこのようにしました」

と記載されていれば、遺言者の考えを理解しやすくなります。

相続争いの予防につながることもある

もちろん、付言事項を書けば必ず相続争いを防げるわけではありません。

しかし、遺言者本人の言葉が残されていることで、相続人がその意思を尊重しようと考えるきっかけになることは少なくありません。

実際の相続でも、

「父の思いだから従おう」

「母がここまで考えて決めたのなら受け入れよう」

といった形で円満に解決するケースがあります。

反対に、理由が全く書かれていない遺言書では、

「なぜこのような内容なのか」

を巡って疑念が生じることもあります。

長く書けばよいというものではない

もっとも、付言事項は長文である必要はありません。

むしろ、

  • 感謝の気持ち
  • 遺言を作成した理由
  • 家族への願い

などを簡潔にまとめる方が伝わりやすいこともあります。

特定の相続人への不満や他の相続人を傷つける内容を書くと、かえって紛争の原因になる場合もありますので注意が必要です。

東三河でも増えている付言事項付きの遺言

豊橋市や豊川市など東三河地域でも、

  • 子どもが複数いる家庭
  • 再婚家庭
  • 子どもがいない夫婦

など、家族関係が多様化しています。

そのため、

単に財産の分け方を決めるだけでなく、

「なぜそのような遺言を作ったのか」

という思いを残したいと考える方も増えています。

付言事項は、そのような希望を実現するための有効な手段の一つです。

まとめ

付言事項には法的効力はありません。

しかし、遺言者の思いや考えを家族へ伝えることで、遺言内容への理解を深め、相続トラブルの予防につながる場合があります。

遺言書を作成する際には、財産の分け方だけでなく、

「家族に何を伝えたいのか」

という視点から付言事項を検討してみるのもよいでしょう。

相続は財産の問題であると同時に、家族の問題でもあります。

だからこそ、最後のメッセージを残すことには大きな意味があるといえます。

この記事は、愛知県豊橋市の弁護士法人柴田・中川法律特許事務所の弁護士が監修しています。
同事務所では、豊橋・東三河地域を中心に、相続・遺産分割・相続放棄・遺言、遺留分、成年後見などの法律相談に対応しています。

About
柴田 肇
柴田 肇
代表弁護士・弁理士
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